決算書の表示については、その表示場所・区分などによって、その会社の評価・信頼に大きな差が出ることがあります。
今回は損益計算書における損失の表示について説明します。
会社に損失が発生した場合、その損失は損益計算書に表示されますが、
その損失をどこに表示するかによって、粗利、営業利益、経常利益の数値が変わってきます。
損失を原価に含めてしまえば売上総利益、営業利益、経常利益すべてが少なく表示されます。
しかし経常利益より下の特別損失に計上すれば、上記の数値には反映されません。
上記の理由から損失については、理由がつく限りなるべく特別損失に表示すべきということになります。
例えば数年に一度しか発生しない臨時的な損失や過年度の損失などです。
これは会計の知識がある人にとっては基本ですが、たまにこういう基本的な知識がなく、
特別損失を経常利益に反映させて決算を組んでいる会社を見かけることがあります。
場合によってはその処理により、その会社は大きく信頼を失うことになります。
具体的事例で説明します。
ある製造業の会社の事例です。
事業を始めて数十年、順調に会社を経営してきました。
そんな折、大口の取引先から今までにないレベルの受注が舞い込みます。
しかしその受注案件で外注加工業者と裁判を起こすトラブルになり、大きな損失を出すことになってしまいました。
裁判を起こすほどの大きなトラブルは初めてのことです。
これはもちろん経常的な出来事ではないので、表示場所は特別損失が妥当です。
しかしその会社はその損失を原価に含めて決算書を作成しました。
その結果、売上総利益、営業利益、経常利益すべてが極端に減少してしまうことになりました。
この会社は通常の経営状態が極端に悪い状況であると、外部に報告せざるを得ない決算書を作成したのです。
特別損失に計上していれば、粗利、営業利益、経常利益には本来の利益が計上されているはずでした。
最終の当期利益は同じ数字かもしれませんが、外部に与える印象は大きく違ってきてしまいます。
また各利益を売上で割って算出する収益性の分析(売上対利益率)にも悪影響が出ます。
売上総利益率、営業利益率、経常利益率の数値はすべて悪化してしまい、目も当てられない分析値となってしまいました。
同業他社比などで見られた場合、競争力ゼロの会社と判断されてもおかしくないことでしょう。
結果、金融機関から大きく信頼を失い、新規の借入は困難な状況となってしまいました。
臨時的・多額の損失が発生した場合には、その損失は経常損益に反映させず、特別損失に計上すべきです。
これは粉飾でも嘘の報告でもありません。
このようなたったひとつの簡単な処理が、会社の信頼に大きな差を生むことになります。
場合によっては金融機関から信頼を失い、倒産せざるをえないという事態も起こりかねません。
たかが決算書の表示方法一つですが、特別な損失が発生した場合には特に注意が必要です。
まとめ
1・損益計算書の表示場所によって経営分析値などに大きな差が生まれる
2・臨時的・多額の損失は特別損失に計上する
3・損失の表示場所を間違えることで信頼を失うこともあり得る