「売上が増えれば会社は良くなる!」
そう思っている経営者の方は多いと思います。
確かに売上が無ければ何も始まりませんし、経費の支払もできません。
利益増加のためには、売上の拡大が必要不可欠であり、避けては通れない道です。
しかし売上の拡大さえすれば、必ず利益が出るわけではないことも事実です。
ここは間違いやすいところですので、気をつけなければいけません。
「売上を増やすためには経費がかかる」
という事実が忘れられがちです。
商品販売業であれば仕入が必要ですし、販売費も売上に比例して増えていきます。
また新たな拠点を設置し、営業マンの増員などをすれば固定の経費も増加となり、
人員が増えればそれに比例して、活動するための諸経費も増えていきます。
売上は拡大したけれど経費を差し引いたら、逆に赤字になってしまうということも起こりかねません。
売上の増加=利益の増加
この算式が成り立つ仕組みが必要となります。
その仕組みを前提に経営計画を立てなければなりませんが、
その計画を立てる際にとても役に立つのが変動損益計算書です。
ほとんど通常の損益計算書と一緒なのですが、経費の区分方法に大きな違いがあります。
通常の損益計算書は経費を売上原価・販売費及一般管理費などと分類していきますが、
変動損益計算書は経費を変動費と固定費に分類します。
変動費と固定費の定義は以下のとおりです。
変動費=売上の増減に連動して増減する経費
固定費=売上の増減に関係なく発生する経費
この経費の区分(固変区分)が最も重要な作業になります。
なぜこのように経費を厳密に区分する必要があるのでしょうか?
それは売上の増加により変動する経費を把握しなければ、正しい利益計画が立てられないからです。
試しに通常の損益計算書だけで固変区分をしないで計画してみましょう。
例)1・毎月の販売費一般管理費 1,000万円
2・売上総利益率 40%
月次で赤字にならないようにするためには、いくらの売上が必要でしょうか?
これしかヒントがなければ勢い以下のような計算式になってしまいます。
1,000万円 ÷ 0.40 = 2,500万円
これで成り立てばいいのですが、実はこの会社は販売のために手数料、発送費、交通費などで
大体売上の15%が必要だったとなるとどうなるでしょうか?
その場合は売上2,500万円に対して、販売費が375万円増加してしまいます。
つまり目標売上高を達成しても、損益はマイナス375万円になってしまうのです。
これではまずいことになってしまいますね。
ではこのようなことにならないために、変動損益計算書で計画してみましょう。
ちなみに変動損益計算書では売上から変動費を控除した利益を限界利益といいます。
通常の損益計算書でいう粗利に近いので一緒にされやすいですが、実はここに大きな違いがあります。
変動損益計算書による逆算は以下の通りとなります。
1・売上総利益が40%ということは原価率が60%
2・販売費比率は売上の15%
3・1と2を合わせると売上に対する変動費率は75%
4・3から逆算して限界利益率は25%
5・1,000万円 ÷ 0.25 = 4,000万円
いかがでしょうか?
販売費一般管理費の中の変動費を加味しただけで、目標売上は1,500万円も差が出てしまいました。
どちらが正しい計算かは、言うまでもありません。
うっかり2,500万円を目標にしていれば、その月は目標を達成しても赤字となってしまいます。
これは少し極端な例ですが、実際これに似た事例はあちらこちらで起きています。
特に変動費率が高い業種は注意が必要です。
売上に連動する経費かそうでないかをキッチリ区分して、損益計算の計画を立てれば
より正確な目標売上を設定することができるようになります。
まとめ
1・売上が増えれば必ず利益が出るわけではない。
2・その原因を見つけるためには経費を変動費と固定費に分けて分析する必要がある。
3・目標利益を達成するための売上高の算出は、変動損益計算書で逆算したものを使う。