相続対策の一つとして、相続財産の評価額を下げるという対策があります。
相続税は人が死亡したときに、その人が持っていた財産の評価額を基に計算されます。
つまりその評価額が少なければ、負担すべき相続税額を下げることができます。
ただし実際に財産の価値が下がってしまっては意味が無いので、財産の価値はキープしたうえで、評価額を下げる必要があります。
実際の価値と相続税における評価額の差が大きければ大きいほど対策としては効果を発揮していることになります。
今回はどちらかというと相続財産の額が大きい人向けですが、
財産を土地建物に変えることで、評価額が下がっていく基本的な仕組みを解説します。
まずは比較のため、現金預金の具体例を見ていきます。
こちらは実際の現金預金の価値が100であれば、相続税の評価額も100です。
つまり現金や預金で財産を持っているだけでは、全く相続税の評価額は下がらず
相続対策にはならないといことがおわかりいただけると思います。
それを踏まえて、次は土地を購入したケースを見ていきましょう。
この場合は実際の土地の価値が100の場合、相続税の評価額は概ね80となります。
時価1億円の土地を購入すると、相続税の評価額は8,000万円程度になるということです。
若干ですが、評価を下げる対策になっています。
次は建物を取得したケースです。
この場合は建物の実際の価値を100とした場合、相続税の評価額はだいたい60となります。
ただし建物については、年数が経過すると差が縮まり、逆転してしまうケースもあります。
古い建物は注意が必要です。
では次に土地や建物を賃貸した場合を見ていきましょう。
まず土地ですが、土地を貸してその土地の上に建物を建てさせた場合は借地権というものが発生し、借地権割合の分だけ、土地の評価額が下がることになります。
細かい条件がありますので、必ずそうなるわけではありませんが、他人に貸すことにより評価額は大きく下がります。
次に建物ですが、建物を賃貸した場合は30%評価が下がります。
これは建物を借りた相手に借家権というものが発生することに起因します。
土地建物は自用ではなく、他人に貸すことで評価が大きく下がります。
ただ土地建物の利用が制限されることになりますので、この点は注意が必要です。
また土地については、利用形態に応じて「小規模宅地等の評価減」という土地の評価額を一定割合減額する特例があります。
場合によっては土地の評価を80%減額できるので、評価額を下げる対策の一つとして考慮すべき有利な制度です。
それではこの土地建物を利用した相続対策、一体どの程度の財産がある人が、検討すべきでしょうか?
これはご本人の性格や考え方、財産の状況などにもよりますが、
財産が5,000万円を超えたあたりから意識し始めて、1億を超えたくらいからは本気で検討する必要があるのではないかと思います。
それまでは、わざわざ相続対策として不動産を買わなくても、生命保険などの別な対策で十分です。
不動産は相場の動きも激しく、賃貸業も思っているほど楽ではありません。
相続対策のために不動産を購入したら、本当に財産が減ってしまったということがあっては本末転倒です。
ある程度余裕資金がある人が、間違いのない不動産を選べることが絶対的な前提条件となります。
いかがでしょか?
いろいろ条件や注意点はありますが、大きな財産をご家族になるべく多く遺すには有効な相続対策です。
ご自分の財産の金額や構成・不動産の利用状況などをご確認のうえ、是非ご検討いただければと思います。
まとめ
1・不動産を購入することで、実際の価値に対する相続税の評価額を下げることが出来る。
2・ただし不動産の購入や賃貸業はリスクがあるので、注意が必要。